知財風塵録

経営者、産学連携コーディネーター・URA、発明者(研究者・開発者)が知っておきたい知的財産と特許の世界

発明の新規性喪失の例外の規定(特許法第30条):6月から1年へ延長?

特許出願において発明の新規性喪失の例外の規定(特許法第30条)というものがあります。特許出願前に学会発表等をしてしまった場合を想定しており、一定期間内(6月以内)であれば、自己の行為によって新規性を失ってしまった発明であっても、新規性を失わなかったものとして扱う(特許法第30条第2項)、あるいは意に反して新規性を失った発明であっても、新規性を失わなかったものとして扱う(特許法第30条第1項)という規定です。
最近(平成29年4月)、複数のかたが、この一定期間が6月から1年へと延長された、と誤解していることに気がついたので、そして、延長されたと誤解したまま学会発表等をされていることに気がついて大変に驚いたので、以前の記載と重複するのですが、アップしておきます。
確かに、この一定期間を6月から1年へ延長する法改正が、平成28年に成立しています。しかし、これはTPP締結に伴う整備のための法律の一部として成立したもので、TPPが日本国について効力を生じる日から施行される法律となっています。そして、TPPは未だ日本国において効力を生じていませんし、その見込みは薄いものとなりました。
ですので、発明の新規性喪失の例外の規定(特許法第30条)の一定期間は、未だ6月です! 1年ではないので、ご注意ください。
(なお、この規定はそもそも日本国特許法による救済規定ですから、6月と規定されていようと、1年と規定されていようと、外国には関係がありません。ヨーロッパ等の外国での権利化可能性も踏まえれば、特許法第30条を頼らずに、発表前に特許出願することは、実務的には常識である、とお考えください。)