知財風塵録

経営者、産学連携コーディネーター・URA、発明者(研究者・開発者)が知っておきたい知的財産と特許の世界

切り餅事件(特許)から学ぶこと(1):事件の概要

 切り餅事件をご存じでしょうか。切り餅業界大手のA社(原告・特許権者)が、同じく切り餅業界大手のB社(被告)を特許権侵害で訴えた事件です。最終的にA社の訴えに対して、訴額よりは遥かに少なかったものの、A社の年間経常利益の数倍に及ぶ損害賠償額が認められました。数年前にマスメディアで広く取り上げられたことから、どこかでご覧になったことがあるかも知れないですね。多くの特許権侵害訴訟のなかで、なぜこの事件だけがこれほどまでに熱心に報道されたのかは不明ですが、切り餅という比較的に身近な製品が対象であって、切り餅に切り込みを入れて焼いたときにうまく膨らむようにしたという理解しやすい技術であった、といった事情が影響したのかも知れません。

 具体的な事件ですから、学ぶこととして、いろいろなポイントがあるのですが、大きなポイントのひとつは、被告B社がA社の特許権を無効であるとして争って、それが認められなかったという点です。