知財風塵録

経営者、産学連携コーディネーター・URA、発明者(研究者・開発者)が知っておきたい知的財産と特許の世界

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切り餅事件(特許)から学ぶこと(9):B社の対応からさらに学ぶポイント

 B社が受けたような判断を受けないためには、訴訟事件となる以前の段階で、このパック入り「切り餅」の日付を発売当時に確定しておくことの他に、対応準備となるような選択肢はあったでしょうか。

 それは、B社も行っていたような、特許出願です。

 B社がある発明を特許出願して、それが出願公開されれば、その後にA社が同じ発明を特許出願しても、A社は特許権を得ることはできないのです。

 この出願公開とは、特許出願の内容を公開する制度です。出願人から特に手続を行わなくても、出願日から1年6月経過後に、特許出願の内容は特許庁から公開されます。出願公開されて、誰もが知るようになった発明については、(その特許出願の出願人以外の人が)特許権を得ることができなくなるのは、当然のことに思われますが、それだけですと、単に製品を発売・発表したり、刊行物に記載した場合と同じです。

 ここで重要なのは、特許出願によっていわば他社の権利化を阻止する効果は、この出願公開の日に先立って、特許出願の日から始まることです。つまり、自社が特許出願すれば、1年6月の間、他社に対しては秘密にしながらも、他社の権利化を事前に阻止できるのです。

 また、加えて重要なのは、この特許出願したことによって生じる、いわば他社の権利化阻止の効果は、特許出願して出願公開されることだけで発生することです。その後にその特許出願が、特許権になってもならなくても、その他社権利化阻止効果は、変わることなく維持されます。

 つまり、もし、B社が、平成14年10月21日の製品発売の直前した特許出願のなかで、上下面にスリットが入った切り餅の発明だけではなく、上下面と側面の両方にスリットが入った切り餅の発明を記載してさえいれば、たとえB社がそれを権利化しなかったとしても、A社の特許権は発生することがなく、この事件はそもそも生じようがありませんでした。

 このことが、発売当時にパック入り「切り餅」製品の日付を確定しておくことに加えて、あり得た重要な選択肢です。