知財風塵録

経営者、産学連携コーディネーター・URA、発明者(研究者・開発者)が知っておきたい知的財産と特許の世界

事業実施確保と製品の保管(3):特許出願について

 自社の実施の事業の継続を確保するための「製品の保管」は、「事業の記録」と読み替えて、それぞれの事業にあわせて、工夫するしかありません、とご説明しました。
 この場合に、ある程度、一律の手段で、自社事業実施継続の確保手段となるのが、特許出願です。

 このことは、以前に掲載した「切り餅事件(特許)から学ぶこと」の一連のブログ記事において、自社が特許出願すれば、1年6月の間、他社に対しては秘密にしながらも、他社の権利化を事前に阻止できるのです、とご説明した通りです。

 自社で「事業の記録」を行うとなると、その日付の確定や、資料の保管などについて、「事業の記録」の価値が失われてしまうことのないように、継続的に社内で管理をしてゆかなければなりません。事情を知らない誰かが例えばうっかり開封してしまったら、それまで管理してきた「事業の記録」が無価値になってしまったりします。いわば、継続的に負担が発生します。

 これに対して、上記目的の特許出願であれば、いったん出願してしまったら、社内の管理はほぼ終わりです。特許権の取得を希望するならば、その後の手続が必要ですが、希望しないのであれば、特許庁に対するその後の手続も必要がなく、事情を知らない誰かが管理を失敗するということもあり得ず、その後の費用その他の負担は発生しません。

 特許出願は、特許権の取得を希望して行う場合がもちろん多いのですが、特許権の取得以外にも、このような使い途があるのです。