知財風塵録

経営者、産学連携コーディネーター・URA、発明者(研究者・開発者)が知っておきたい知的財産と特許の世界

日本国特許法改正(グレースピリオド・存続期間延長等)とトランプ大統領とTPP

著作権法改正とは異なり、一般的な話題とはなりませんでしたが、TPP対応のための日本国の法改正として、特許法改正も国会を通っておりました。もちろん、トランプ大統領の決定によるTPPの不発効で、この特許法改正も(このままの法律としては)施行されないものとなりました。
しかし、存続期間延長などについては、むしろ、取り入れてもよいような気がしますし、このような法改正は、特許庁が大変に嫌がりそうなので、国内主導では立法されなさそうな法改正ですから、むしろTPPを契機に法改正されてもよいように思っていましたので、この点はちょっと残念です。
米国では、特許出願審査中の審査官の審査業務の遅延によって権利化が遅れた場合には、その権利期間を調整して補償するという制度が以前からあります。米国のこの制度は、審査官側にしてみると、業務の速度を測定・評価されるという制度となっています。今回の特許法改正では、この米国で行われている権利期間の調整・補償の制度を、日本にも導入しようとするものとなっていました。しかし、審査官側の業務について速度が測定・評価され、場合によっては権利期間を補償するという制度は、行政庁が大きな力を持っていて事実上の法律案を作成する日本では、行政庁(特許庁)がこのような法改正の導入を行うのは消極的になるのが自然です。その意味では、TPPだからこそ導入の契機になったようにも思われます。
(なお、米国では、審査官の審査業務は、速度だけではなくて、その業務量もポイント制で評価をうけますし、審査結果の精度も抜き取り検査で評価を受けます。)
(なお、審査業務の遅延どころか、日本国特許庁は、過去に特許査定となった特許出願や登録できる状態となった実用新案登録出願を、庁内の作業としてするべき登録をし忘れたままに放置して、登録して権利を発生させないままに権利期間が満了してしまったという事故を、相当件数生じさせています。この事故の告知は、その当時には特許庁からもウェブで掲載されていたのですが、現時点では、なぜかウェブで検索してみても、その記録が見つかりません。特許庁ウェブページのリニューアルの際に、消してしまったのでしょうか・・・。消してしまって、よいものなのでしょうか。)