知財風塵録

経営者、産学連携コーディネーター・URA、発明者(研究者・開発者)が知っておきたい知的財産と特許の世界

「イソジン(登録商標)」事件から学ぶこと(6)補足

 「イソジン登録商標)」事件について補足します。
 「イソジン登録商標)」事件では、商標権の保有とそのライセンス(使用権契約)の満了については、A社側(商標権者側)及びB社側(使用権者側)とで、見解の違いはないようです。
 にもかかわらず、お互いに不正競争行為差止等仮処分命令申立を行っています。
 これには、それまでのB社側のうがい薬のパッケージには、登録商標の表示以外に、擬人化された「カバくん」のキャラクターが描かれていて、それがB社のうがい薬のイメージとしてそれなりに定着していたという事情があります。
 B社はこの「カバくん」のキャラクターについては、「イソジン」の商標の使用を終了した後も、自社のうがい薬のパッケージに表示して製造販売を続ける予定としていました。
 一方で、A社はそれまでのB社側のうがい薬のパッケージと似たパッケージを、C社から販売する、「イソジン」の商標を使用したうがい薬のパッケージとして使用することにして、B社の「カバくん」のキャラクターと似た動物キャラクターを描くことにしていました。
 A社とB社はともに、その相手方の行為をやめるように、裁判所に訴えた(不正競争行為差止等仮処分命令申立を行った)のです。
 この「カバくん」のキャラクターの使用についても、いろいろとこの事件からは学ぶことがあります。
 例えば、特徴的な「カバくん」のキャラクターをずっと以前から採用して(このような事態に)備えていたであろうB社の着眼の良さには学ぶところがありますし、一方でA社から「イソジン登録商標)」のライセンスの更新をしないと伝えられるまでこの「カバくん」のキャラクターについての商標登録を行っていなかったB社の対応の遅れにも学ぶところはあります。もっとも、A社とB社の和解内容は公表されていませんから、「カバくん」のキャラクターの寄与の程度はわかりません。
 ともあれ、これらの工夫についても学ぶところはあるにせよ、先にまとめとして述べたように、自社の事業は、できるだけ早期から、自社所有の登録商標を使用して行うことが、長期的に見れば、誰にとっても望ましい、ということには違いはないように思います。